月曜日、定年退職された先輩が部署にお茶菓子を差し入れてくださった。
火曜日の朝、そのことをみんなに伝え、休憩所に置いてあるので「ひとりひとつずつどうぞ」と案内した。
そして水曜日。前日休んでいた後輩ふたりが、同僚に「昨日、退職した先輩からお菓子をもらったから、君たちももらっておいで」と言われてやってきた。
「お茶菓子はどこにありますか?」と聞かれたが、その時にはすでにすべて分け終えていて、残っていなかった。
ふたりは「無ければ、別にいいですよ」と笑って職場に戻っていったけれど、その場には少し、後味の悪い空気が流れていた。
自らお茶菓子を確保してあげる――それが本当の優しさなんじゃないかと思った。
そして、「お菓子は休んだ人の分も残っているだろう」という勝手な思い込みが、結果として人を不愉快にさせてしまうこともある。
小さなことだけど、大切なこと。そんなことを感じた出来事だった。